traditional handcraft
昔ながらの素材と製法と。
soft rubber material
ふわふわの素材づくり
ヒッポブルーはタイのバンコク郊外、小さな工場で作られる。
旧式の機械を使って、昔ながらの製法で手作りに近いスタイルで一足ずつ。「バンコクでも一番作るコストは高い工場だよ」と工場のオーナー、Adul氏。
値段が高い分、その出来栄えは最高。ふわふわでいて弾力ある素材のビーチサンダルは職人たちの確かな技術で作られている。
まず、原材料の天然ゴムが大きな板状になって納品される。同じタイで栽培・収穫された高品質な天然ゴムだ。あめ色の天然ゴムの板を顔料などと合わせて、機械で均一に混ぜていく。かまぼこを作る工程のように何度もそれを繰り返す。
均一に混ざったら、今度はそれを平らに伸ばし、巨大なオーブンのような機械で、バルカナイゼーション(加硫法)というプロセスにて焼成する。
このバルカナイゼーションという手法は今から180年前アメリカ人のチャールズ・グッドイヤーによって発明された。そう、タイヤメーカーの名前の由来になった歴史上の人物だ。
ちょうどオーブンでパンを焼く時のプロセスを思い出す。パン!という大きな音とともに膨らんだ気泡ゴムが出てくる。これがビーチサンダルのソール(靴底)になる。ふわふわでマシュマロのような柔らかさのソールはこの方法で誕生する。
焼き上がったゴムの板は工場に積まれ、1ヶ月程度寝かされる。ソールの原型はなんとなく明らかになってきた。次は鼻緒だ。
carefully crafted
一足一足、丁寧に丁寧に。
鼻緒は別の工場で作られているが、こちらは鼻緒の形の金型に天然ゴムを注入するインジェクションの工程。鼻緒もソールも同じ素材だが、鼻緒は気泡ゴムではなく押し出し製法でできている。金型に注入された天然ゴム、冷まして型を外したらこの通り。
さて、焼成されてできた気泡ゴム、十分寝かされた後の工程はカッティングだ。ここでいよいよビーチサンダルの形が仕上がってくる。大きなプレス機にサンダルの形の抜き型をセットし、クッキーの型抜きの要領で上からガチャン。ビーチサンダルの形が現れる。
ヒッポブルーのソール断面は切れ端がくっついておらずとてもきれい。それはカッティングした断面を研磨し角と切れ端を落としているから。細部にも丁寧な処理に余念がない。ソールと鼻緒、どちらも完成した。後は組み立るだけだ。
鼻緒の端を金具に取り付け、金具を通し組み立て完了。ビーチサンダルの出来上がり。ハンドメイドに近い、昔ながらの製法で作られるヒッポブルーのビーチサンダルの誕生だ。
craftsmanship and bond
モノづくりと信頼と
今から10年以上前のチャオプラヤー川の洪水を覚えているだろうか。
この工場は当時床上1m程度浸水している。日本の洪水とは違い、ゆっくり水位が上がったため、機械類は全て2階に引き上げ難を逃れた。ただゴム板は一部被害を被ってしまった。
「あの時は泥水にゴム板がプカプカ浮いてたんだ」とオーナー。
工場には今にも当時の痕が残っている。そう言えばあの年は納期がかなり遅れ大変だったと思い出す。まあ、あの当時、日本ではまだほとんど売れていなかったから影響ないに等しいものだったが。今同じことが起こったらと思うとゾッとする。
タイの農園で栽培されたゴムノキの樹液が適切に工場に供給され、工場ではちゃんと生産できる体制がある。そしてそれを輸送する手段も確保されている。当たり前のことだが、そのどれもが途切れたら日本での販売は不可能だ。生産量が格段大きいわけではないタイの小さな工場。
日々、ここで働く人がいるからこそ、日本で販売する事ができる。毎年お菓子を持って会いに行く事くらいしかできないけど、彼らの勤勉さにはいつも敬意を払っている。